投稿日 : 2014.12.4 記事 : 樫田那美紀 写真:今野昭彦
「星耕硝子」−
「seikou」という音の凛とした響き。
そんな静かに輝く星のような名前をつけられたガラス工房とは一体どんなところなのか。
辺りは、地名の「平野」という名も頷けるほど、田んぼが果てしなく続いています。
田んぼのあぜ道を車で走ってたどりついたそこには、
本当にここがあの「星耕」硝子なのか―?
しかし工房の奥に一点の紅い炎を認めた瞬間、
中では、作り手の伊藤嘉輝(いとうよしてる)さんが作業をされています。
人が三人も入ればぎゅうぎゅうになってしまいそうな小さな作業場。
「スタジオガラス」とは、民藝のガラス職人の中では随一の存在とも言える「倉敷ガラス」小谷真三さんが確立した手法。
伊藤さんも小谷さんに憧れて、社会人時代を経て一念発起、ガラスの道を志した一人。
しかしもやい工藝店主、久野恵一さん曰く、つくり方は小谷さんの真似をしながらも、
使用する硝子は廃材となったビールの瓶や調味料の瓶などを再利用したもの。 久野さんはガラスを吹く前のこうした事前作業に、伊藤さんの丁寧な仕事が表れていると語ります。
伊藤さんの元にこなければ廃材として処分されてもおかしくない瓶たちは、 まず、硝子を窯で溶かします。
時々ガラスを回しながら、満遍なく火を当てます。 続いて吹きの工程。
真っ赤なガラスを高く掲げ、息を吹き込みながら手早く回します。
再び窯へ戻し、また吹き、を繰り返すことでガラスが変化していきます。 その後、成型。
伊藤さんの手早い道具さばきで、みるみるうちにその形が表れていきます。
ハンドル付けもじっくりした手で、でもあっという間に。
そしてこちらmoyaisでの取り扱い中の短脚ワイングラス(角・青)。
実はこのグラス、さきほどの一つのガラスの塊から一気に作品をつくる工程とは少し違う、
どこか繊細な雰囲気を残しつつも、毎日の「用」をしっかりささえる工夫が施されているように思います。
この「モール」という機械の中で硝子をひねることで付けられているのです。 そのぐっと目が吸い寄せられるような青いグラスに一目惚れ、私も買わせていただきました。
食前酒のワインを注いで素敵なディナーを演出・・・といきたいところですが、
ガラスって冷たい?夏のものでしょ?
今頃雪がしんしんと降っているであろう北の大地に建つ工房を想いながら、
星耕硝子はこちらです。 アーカイブ
・第一回 小代焼 ふもと窯 |
窯元をめぐる旅日記も三回目を迎えました。 今回は秋田の星耕硝子さん。
大学生がはじめて見たスタジオガラスの工房。 感じたことを素直に書き綴ってもらいました。