投稿日 : 2016.1.17 記事 : 平野 美穂

昨年12月、鎌倉もやい工藝スタッフ・堀澤三香さんを訪ねました。堀澤さんはもやい工藝のオーナーであった故・久野恵一さんとともに、長年日本各地の窯・作り手を訪ねてきました。現在も小鹿田焼や沖縄・北窯の窯出しには直接出向いて、もやい工藝にならぶものを選んでいます。民藝・手仕事のうつわをよく知る堀澤さんに、moyaisスタッフ・平野がお話を伺いました。

久野恵一さんの言葉

  • 平野:
  • 堀澤さんは久野さんと長い間一緒にお仕事をされてきましたが、久野さんに言われたことで何か印象深い言葉はありますか?
  • 堀澤:
  • 「若い人を大事にしなさい」という言葉です。若い人はものを見て育っていく「これからの人」だから、その人達に親切にしてあげることが大事、と言っていましたね。
  • 平野:
  • 私の勝手な想像で、久野さんはこの数年で若者に託していかなければ、という風になったと感じていたのですが、以前からそういうお考えだったのですね。
  • 堀澤:
  • そうですね、もう最初の頃からでした。
  • 平野:
  • 久野さんと訪ねた場所で印象に残っているのはどこですか?
  • 堀澤:
  • 初めて行った小鹿田です。お店で働きながら坂本茂木さんや柳瀬朝夫さんのうつわを見ていて、作っているのはどんな人なんだろう、と想像していたんです。それがずっとあって初めて小鹿田に行き、茂木さんが作っているところを見たり、一緒にお話したりして感激しました。あのうつわがこういう場所でこういう風に作られているんだ、と。それが一番印象に残っています。
  • 平野:
  • 小鹿田はもやい工藝にとって特別な場所なんですね。その頃坂本浩二さんはかなり若かったのでしょうか?
  • 堀澤:
  • はい、かなりの若手でした。
  • 平野:
  • 今は小鹿田を代表する陶工の一人ですが、久野さんは本当に若手の頃から浩二さんに関わってきたんですね。
  • 堀澤:
  • 久野さんは浩二さんと年月をかけて関わり、注文しては買い取って細かいやりとりをし、育てていきました。浩二さんもその時の「久野意匠」や「もやいオリジナル」を大切にしてくれています。他の窯元ともそういった形で関わっています。
  • 平野:
  • 「こんなものを作って欲しい」とオリジナルで注文するのは、かなり知識と経験が豊富でなければ出来ませんよね。それはこれからも続けていかれるのでしょうか?
  • 堀澤:
  • はい。これから何年かかけて久野さんが回っていない場所にも行ってみて、いい作り手さんと出会えたら色々な提案をしてみたいな、と思っています。
  • 平野:
  • それは楽しみですね。

伝統の技と形を残す

  • 平野:
  • 久野さんは旅の途中でおいしいものを食べるのが大好きでしたが、堀澤さんが食べたもので美味しかったものは何ですか?
  • 堀澤:
  • いろいろあるのですが、沖縄に初めて行ったときに北窯の松田共司さんと宮城正享さんが夕食に招待してくださって、そこで食べた冬瓜とソーキのおつゆです。料理もすごく美味しかったのですが、「沖縄のうつわってこういう風に使っているんだ!」と現地で実際に見たことが印象的でした。
  • 平野:
  • 沖縄の大自然に囲まれて食べたらなおさらですよね。
  • 堀澤:
  • 広々とした場所に南国の木が茂っていて、皆さんと一緒に食べるというのが良かったですね。
  • 平野:
  • やはり食べる楽しみはうつわを選ぶ楽しみと繋がっていますね。私は見た目の印象でうつわを選んでしまうことがほとんどなのですが、選ぶ時のポイントがあれば教えていただけますか?
  • 堀澤:
  • まず色や模様に目がいってしまうと思うのですが、一番大事なのは形です。
  • 平野:
  • 形は使いやすさに繋がりますね。
  • 堀澤:
  • はい。例えばご飯茶碗だったら口に当たるので、縁の作り方を見ます。
  • 平野:
  • 反っているほうがいいのでしょうか。
  • 堀澤:
  • 反りすぎていてもだめなのですが、反りと厚みがちょうどいいかを見ます。あとは持った時の程よい重さですとか、高台と本体のバランスですね。窯によっても伝統の形がありますので、それを見極めながら選んでいます。
  • 平野:
  • なるほど、その土地の伝統を知っているからこそ選べるのですね。それを知らないでオリジナルを提案してしまうと伝統を壊すことにもなりかねませんね。
  • 堀澤:
  • 瀬戸の茶碗を沖縄に持っていって作ってもらう、といったようなことは決してないです。
  • 瀬戸の飯碗
  • 平野:
  • よく久野さんは古いものを見本として作り手さんに渡していましたよね。
  • 堀澤:
  • はい。まず久野さんの中にその土地の伝統と作り手の技術などの基準があって、これだったらあの作り手に作ってもらうのがいい、この形はあそこには合わないというのを瞬時に見分けていたのだと思います。それは経験があるから出来ることですね。
  • 平野:
  • ものすごい数の引き出しがないと出来ないことだと思います。

後編につづく・・・


もやい工藝
〒248-0017
神奈川県鎌倉市佐助2-1-10
電話 0467-22-1822
営業時間 10:00〜17:00 火曜休み(祝日を除く)
平野 美穂
平野 美穂
鎌倉在住
足繁くもやい工藝に通う3児の母。moyaisではFacebookやブログへの投稿を担当している。

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